ブロックチェーンの次なる革命「スマートコントラクト」とは何か
目次
- スマートコントラクト(Smart contract)の定義
- 経済産業省もスマートコントラクト(Smart contract)に注目
- スマートコントラクト(Smart contract)はプラットフォームとしてイーサリアムを活用
- スマートコントラクト(Smart Contract)の応用例
- スマートコントラクト(Smart contract)で押さえておくべき企業
- スマートコントラクト(Smart contract)に対する有識者の見解
- スマートコントラクトを学ぶ上でオススメの書籍
- スマートコントラクト(Smart contract)を学ぶ上でオススメのツイッターアカウント
- スマートコントラクトと自立分散型企業(DAO/DAC)
こんにちは。
本日は、スマートコントラクトとはなにかについてまとめてみます。
スマートコントラクト(Smart contract)の定義
スマートコントラクトは、ブロックチェーン上の契約です。ただし、紙の契約と異なり、それ自体に強制力のある契約です。自力執行権のある契約と説明されることも多いです。あらかじめ日時や執行条件を設定しておけば、プログラムがその契約を実行してくれるのです。その定義は曖昧で、専門家によって見解が異なります。
ヴィタリック・ブテリンによる定義
ヴィタリック・ブテリンによる定義を記載します。
A smart contract is the simplest form of decentralized automation, and is most easily and accurately defined as follows: a smart contract is a mechanism involving digital assets and two or more parties, where some or all of the parties put assets in and assets are automatically redistributed among those parties according to a formula based on certain data that is not known at the time the contract is initiated.
参考:
DAOs, DACs, DAs and More: An Incomplete Terminology Guide - Ethereum Blog
Nicolas Dorier(ニコラス・ドーリエ)氏の定義
ニコラス・ドーリエによる定義を記載します。
スマートコントラクトとは、コントラクト(契約)をスマートに行えるコンピュータープロトコルのこと。契約の条件確認や履行までを自動的に強制させられる。ニコラ氏は「スマートコントラクトと呼ぶよりセルフエンフォーシング・コントラクト(self-enforcing contract)、つまり『自力執行権のある契約』という表現の方がその性質をよく表しています」と話す。
Nick Szabo(ニック・サボ)の定義
ニック・サボ氏による定義を記載します。
A smart contract is a set of promises, specified in digital form, including protocols within which the parties perform on these promises.
参考:Nick Szabo The idea of Smart Contract
斉藤賢爾の定義
斉藤賢爾氏の定義は以下の通り。
狭義の定義
デジタルに表現される資産を予め定められたルールに従って自動的に移転させる仕組み
広義の定義
契約を機械で実装する仕組み
また、そのようにして実装された契約
原初的には自動販売機などもスマートコントラクトに当たる
経済産業省もスマートコントラクト(Smart contract)に注目
経済産業省もSmart contract(スマートコントラクト)に注目しています。2016年に開催されたスマートコントラクトカンファレンスでは、経済産業省商務情報政策局の吉本豊氏からスマートコントラクトの有望性について言及する発言がありました。また、経済産業省といえば、楠正憲さんという方が「Blockchainに関する最近の動向」というレポートを提出されていまして、その中でSmart contract(スマートコントラクト)についても以下のような言及があります。
IoTとスマートコントラクトによるマイクロペイメントを組み合わせることで、受益者負担をより正確に反映した公共サービス等のコスト負
担の仕組みが構築可能。(例えば、ゴミの量や道路の利用量に応じた課金による税徴収
スマートコントラクト(Smart contract)はプラットフォームとしてイーサリアムを活用
スマートコントラクト(Smart contract)のアプリケーションを構築するためのプラットフォームとしては、Ethereum(イーサリアム)が採用されます。
イーサリアムとは
Ethereum(イーサリアム)は、仮想通貨の一種で、Bitcoin(ビットコイン)に次ぐ時価総額を誇ります。
Ethereum(イーサリアム)はビットコインに次ぐ時価総額を誇る
Bitcoin(ビットコイン)とEthereum(イーサリアム)の時価総額で全体の90%を占めています。2017年1月28日現在では、ビットコインの時価総額が$14,858,923,494、イーサリアムの時価総額が$930,500,981となっています。仮想通貨の時価総額については、以下のサイトから確認することができます。
参考:Crypto-Currency Market Capitalizations
発明者はヴィタリック・ブテリン
イーサリアムの創設者はヴィタリック・ブテリン。2013年にヴィタリック・ブテリンがホワイトペーパーを発行し、2014年に最初のバージョンがリリースされました。
スマートコントラクト(Smart Contract)の応用例
スマートコントラクト(Smart contract)の応用例について記載しておきます。
応用例①:バークレイズ
バークレイズはスマートコントラクトの活用に対して非常に熱心な印象があります。
2016年4月:金利スワップ
英国の大手銀行バークレイズは、R3Cevが最近公表した分散台帳ソリューション「Corda」を利用し、スマートコントラクトを用いたブロックチェーン技術のユースケースを探っています。投資銀行部門CTOのリー・ブライン氏いわく、
- 銀行は現在、各自で管理している台帳の維持に冗長で莫大な労力を投じている。あまりにも複雑になりすぎているのだ。
- スマートコントラクトやブロックチェーンは、銀行が行う金融コントラクトの課題を解決できる可能性がある。そして、スマートコントラクトのためのテンプレートエディタは、スマートコントラクト普及の最後のピースになりうる
- (R3の)コンソーシアムを通じて、我々は様々なスタートアップや銀行と協力してきた。我々は金融業務における法務・契約に理解があるが、スタートアップはそうではないかもしれない。このような専門知識を共有していくことで、この技術の実現を早め、参入者を拡げることができるだろう。
といった感じ。また、今後数ヶ月の間に、金利スワップ以外のデリバティブにスマートコントラクトを適用していくとのこと。
2016年8月:スマートコントラクト開発に向けたリサーチを公開
英国の大手銀行バークレイズとユニヴァーシティ・カレッジ・ロンドンが共同でスマートコントラクトに関するリサーチペーパーを発表。投資銀行部門CTOのリー・ブライン氏は、今回のリサーチの目的について以下のように述べています。
今夏のリサーチは、スマートコントラクトの持つ”自動性”や”強制性”などがいかに金融機関内で活用出来るかを知るために行なわれた。ブロックチェーンやスマートコントラクトなどの技術は最近芽が出てきたばかりのイノベーションであり、その価値や問題点を我々は知る必要性があった。
また、リサーチチームはスマートコントラクトの問題点について以下のように指摘しています。
もしDAOハック事件のように外部から攻撃を仕掛けられ問題が生じた場合、我々は命令を止める術を知っておかなければならない。また同様にコードに問題が発見された場合、修正したコードを早急に実行しなければならない場面も出てくるだろう
スマートコントラクト(Smart contract)で押さえておくべき企業
以下にスマートコントラクトについて考える際に押さえておくべき企業について述べます。
Consensys(コンセンシス)
まずは、コンセンシス。イーサリアムのエコシステムをつくりあげるべく立ち上がった企業で、イーサリアム上で数多くのアプリケーションを開発しています。
設立:2014年
設立は2014年。
創業者:ジョセフ・ルービン
提供するサービス|uPort・Balanc3
提供するサービスとして有名なのは、本人認証システム「uPort」、三式簿記会計システム「Balanc3」などが挙げられます。
Microsoft(マイクロソフト)と提携
コンセンシスはマイクロソフトと提携しています。
スマートコントラクト(Smart contract)に対する有識者の見解
スマートコントラクトに対する有識者の見解をまとめておきます。
Consensys(コンセンシス)ジョセフ・ルービン
今後、10~20年でスマートコントラクトは破壊的な作用を及ぼすだろう。今行動を起こさなければ、誰もが破壊される側に回ることになる。
スマートコントラクトを学ぶ上でオススメの書籍
スマートコントラクトを学ぶ上でオススメの書籍を紹介しておきます。
ブロックチェーン・レボリューション
まずは、ブロックチェーン・レボリューション。原作はウィキノミクスで有名なドン・タプスコットさんと息子さんのアレックス・タプスコットさん、翻訳は高橋璃子さん、ダイヤモンド社から出版されています。スマートコントラクトについて説明している箇所も多いです。
ブロックチェーン革命
ビジネスブロックチェーン
ウィリアム・ムーゲイヤー氏の著作。有限責任監査法人トーマツが監修しており、また、序文をイーサリアム創設者のヴィタリック・ブテリンが執筆しています。
スマートコントラクト(Smart contract)を学ぶ上でオススメのツイッターアカウント
ヴィタリック・ブテリン
ジョセフ・ルービン
大石哲之
我が国において、いちはやくイーサリアムおよびスマートコントラクトに注目した大石哲之氏のアカウントもフォローするべきです。
スマートコントラクトと自立分散型企業(DAO/DAC)
多数のスマートコントラクトが複雑に組み合わさると、オープンネットワーク型の企業ができあがり、そこに自律エージェントを組み込んだ場合、自律分散型企業(DAO/DAC)となる。自律分散型企業は従来型のマネジメントを必要とせず、個々のエージェントが自律的に動き、価値を創出すると説明されることが多い。現時点ではなかなか現実味がわかないかもしれないが、ビットコインを世界初の自律分散型企業と捉える向きもあるようです。