FinTechの次の潮流「RegTech(レグテック)」の分野で注目すべき企業5選
目次
- RegTech(レグテック)とは何か
- 金融機関で膨らむ規制・コンプライアンス対応コスト
- RegTech(レグテック)が有効活用できる分野
- RegTech(レグテック)に活用されるべき技術
- RegTech(レグテック)で押さえておくべき企業
- 参考:2016/10月:三菱UFJが不正対策で提携
こんにちは。
本日は、RegTech(レグテック)の分野で注目すべき企業をいくつか紹介致します。
RegTech(レグテック)とは何か
RegTechは、英国の金融規制当局として知られるFCA(金融行動監視局)やIIF(国際金融協会)が創り出した概念です。FCAのRegTech(レグテック)の定義は以下の通り。
FinTechの一領域で、規制要件に既存機能よりも効率的・効果的に対応できるようにするテクノロジーにフォーカスしたもの
金融機関で膨らむ規制・コンプライアンス対応コスト
RegTech(レグテック)の重要性が増している背景には、リーマン・ショック以降の規制強化に伴う金融機関のコンプライアンス関連のコスト増が存在します。
JPモルガン
JPモルガンの発表によれば、2012-2014年の3年間で規制・コンプライアンス対応のために、全従業員の6%にあたる1.3万人を増員。それに伴い、営業利益の10%にあたる20億ドルの追加的なコストがかかっている。
ドイツ銀行
ドイツ銀行でも、2014年の1年間で法規制に約13億ユーロの追加コストがかかったと発表
HSBC
HSBCは2013年には3,000名もの追加のコンプライアンススタッフを雇ったといいます。
RegTech(レグテック)が有効活用できる分野
国際金融協会(IIF:The Institute of International Finance)によれば、RegTechは以下のようなコンプライアンスや規制対応において有効に機能するとされています。
- リスクデータの収集
- モデリングやシナリオ分析
- ペイメントの多様化に伴うリアルタイムでのモニタリング
- 顧客(個人・法人)の認証
- 金融機関内部の行為管理
- 市場での取引時のリアルタイム管理
- 新規制対応に伴う早期影響把握
RegTech(レグテック)に活用されるべき技術
さらに、RegTechに活用されるべき技術として、
- マシン・ラーニング、ロボと、AI
- 暗号化
- 生体認証
- ブロックチェーン
- API
- ユーティリティ共有とクラウドアプリケーション
が挙げられています。
RegTech(レグテック)で押さえておくべき企業
Global IDs
まず押さえておくべき代表的なRegTech企業がGlobal IDs。
創業者 Dr.Arka Mukhejee
創業者は、Dr.Arka Mukhejee。特筆すべき事項としては、
- 1999-2001年:IBM Global Servicesにてプリンシパル
- 1996-1998年:Accentureにてシニアマネージャー
- 1995-1996年:KPMGにてシニアコンサルタント
- 1988-1994年:プリンストン大学にて化学専攻で博士号取得
といった感じ。コンサル出身のキャリアで、2001年から起業という感じ。何気に経営者としてのキャリアも15年以上あるんですね。
Global IDsの提供するサービス
Global IDsの提供するサービスは、セマンティック技術を使用し、データの意味合いを自動分析することができるサービスを提供する。これは比較的古典的なRegTechサービスで、ベンダーぽいイメージです。
ComplyAdvantage
次いで、ComplyAdvantage。設立は2011年。
創業者 Charlie Delingpole
創業者はCharlie Delingpole。特筆すべきポイントとしては、
- 2014/1月:ComplyAdvantageを創業
- 2010/1月-2014/1月:Marketinvoiceを創業
- 2006-2009:JP モルガンの投資銀行部門
- 2005-2006:ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス出身
といった感じ。JPモルガンに新卒で入って、そこからは連続起業家みたいな感じなんですかね。
提供するサービス
ComplyAdvantageは、AML/KYC領域におけるマニュアル作業の事務作業負担を削減するサービスを提供する。すでに資金送金業者を中心に20社程の顧客を抱えていると言われている。
Trunomi
設立は2014年。英国に本拠を置く。
創業者 Stuart Lacey
創業者は、Stuart Lacey。特筆すべきポイントとしては、
- 2013-現在:TrunomiのCEO
- 2004-2014:SHL Capital Ltdのディレクター
- 1990-1993:McGill University
といった感じ。
Trunomiの提供するサービス
顧客自身が入力・管理する顧客情報を複数の金融機関で使えるようにすることを可能にするサービスを提供している。例えば、住所変更があった場合、システムから顧客情報を受け取り、最新の状態にアップデートすることが出来る。
EU一般データ保護規則(GDPR)
この最新の状態に常にアップデートするというのが大切なのです。さらに、2016年に採択されたEU一般データ保護規則(GDPR)で、顧客情報の取得・処理に先立ち、顧客からの同意取得とその実証が求められるようになっており、金融機関、顧客双方に負担となっているのです。Trunomiが提供するサービスがこうした課題を解決するための手段のひとつとなるかもしれません。
Behavox
次いで、英国に本拠を置くBehavox。2014年創業のスタートアップです。
創業者 Slav Slavinski
創業者はSlav Slanvinski。特筆すべき点としては、
- 2015-現在:BehavoxのChief Financial Officer
- 2014/-現在:BehavoxのHead of Legal
といった感じ。
Behavoxの提供するサービス
Behavoxの提供するサービスとしては、コンダクトリスク管理の高度化を支援するサービスが挙げられます。要するに、従業員の行動把握の精度を向上させるソソリューションを提供しています。具体的には、以下の情報を収集、分析します。
- テキストデータ
- 声の大きさ
- 会話のスピード
- トーン
- 笑い声
- スラングの頻度
- メールの返信のタイミング
- 入退館記録
2016/3月のSMR(シニア・マネージャー・レジーム)の導入
特に、英国では、2016年3月にSMR(シニアマネージャー・レジーム)が導入されており、コンダクトリスク管理の重要性が著しく高まっています。SMRでは、混濁とリスクが顕在化した場合には、銀行の経営者が個人的に責任追及され、罰則の適用も可能じなっているのです。
Tradle
最後に紹介するのがTradle。
創業者 Gene Vayngrib
創業者はGene Vayngrid。特筆すべき点としては、
- 2014/6月-現在:TradleのCEO
- 2012/2-2014/2月:UrbienのCEO
- 2000-2012:LablzのCEO
といった感じ。
Tradleが提供するサービス
Tradleは、当局がブロックチェーンのノードのひとつとなることで、ブロックチェーン上でKYC情報を共有する実験を提案しています。
Tradleは「Regulatory Sandbox」に参加が認められた24社のうちの1社
Tradleで知っておくべきことは、FCAの「Regulatory Sandbox」に参加が認められた24社のうちの1社だということ。ちなみに、Regulatory Sandboxというのは、要するに、「イノベーティブな商品、サービス、ビジネスモデルやメカニズムについて、現行法・制度を即時適用せずに実験的な試みを可能とする環境」のことを指します。具体的なステップとしては、
- 新規事業を行いたい会社にがSandbox利用の提案を行う
- FCAが許可に関する判断を行う
- テスト方法に関して事業会社とFCAが協力
- Sandboxでのテストの許可
- テストの実施とそのモニタリング
- 企業からFCAへのテスト結果の報告
- FCAによる報告レビューの後、実際のサービスをローンチ
となっています。
参考:2016/10月:三菱UFJが不正対策で提携
最後に、参考として本ニュースを紹介しておきます。
三菱東京UFJ銀行が英金融大手HSBCやシンガポール大手のオーバーシー・チャイニーズ銀行(OCBC)と提携し、資金洗浄やテロリストによる取引などの不正対策にITを活用した金融サービス「フィンテック」を使う実証作業を始めることが5日分かった。シンガポールで年内に着手する見通しだ。不正防止や金融規制への対応に用いるフィンテックを特に「レグテック」と呼ぶ。日本の金融機関は海外と比べてレグテックへの対応が遅れており、今回の提携を通して実用化を急ぐ。三菱UFJ銀とHSBC、OCBCは現在、口座開設や海外送金の際の本人確認を個別に実施している。
参考リンク:三菱UFJ、不正対策で提携 英、シンガポール大手と - 共同通信 47NEWS
今後も、規制・コンプラ関連のニーズは高まりそうで、それに伴い、RegTechスタートアップへのニーズも急速に増してくるだろうと睨んでいます。